What's相続/相続対策

不動産管理会社を活用した相続税対策

執筆:ひかり税理士法人

不動産管理会社を設立すると、どのような相続対策となるのでしょうか。

1 将来起こりうる相続税をどうするか

賃貸用の土地や建物を多数所有している、いわゆる不動産オーナーの方々は、入居者の状況や物件の管理といった日々の業務運営だけでなく、毎年の所得税や住民税の負担に加えて、将来確実にやって来る相続税の問題にも頭を悩ませておられると思います。

このように、個人で多くの賃貸物件を所有されている方については、相続対策の1つとして、思い切って不動産管理会社の設立を検討されてはいかがでしょうか。

2 不動産管理会社設立のメリット

① 毎年の所得税対策として

所得税の税率は超過累進税率になっているため、所得が多いほど税率が上がり負担すべき税金も多くなってしまいます。

そこで、オーナーの親族を役員とする不動産管理会社を設立し、オーナーから不動産管理会社に管理料を支払い、役員である親族に給与を支払うことによって不動産収入を親族に分散します。

所得が分散されることで、結果として親族全体の税負担を引き下げることも可能になります。

② 相続財産の肥大化防止

オーナーが稼得する年々の不動産所得はあらたな資産として蓄積され、さらなる相続財産を形成することになります。

そこで、オーナーが受け取る家賃や地代の一部を不動産管理会社の収入に転嫁することで、オーナーのあらたな資産の蓄積を抑制し、相続財産の肥大化を防ぐことが可能となります。

③ 将来の納税資金の準備

不動産管理会社に収益不動産を移転させ、その収入の一部を給与という形で相続人である親族に分配することで、将来の相続税の納税資金準備に役立てることができます。

また、給与については、その受給者に対して所得税と住民税が課されますが、給与所得には概算経費(給与所得控除)が認められているために、地代家賃収入に比較し、一般的に課税される金額が小さくなるという効果もあります。

3 不動産管理会社設立のデメリット

不動産管理会社の設立にあたって考慮しておくべきコストなどは次のとおりです。

 

① 会社設立に際して、一般的に30間年程度の設立コストがかかります。

② 収入・経費については、オーナーの所得と不動産管理会社の所得とに区分して計算する必要があり、計算が煩雑になります。

③ 不動産管理会社が、赤字の場合でも最低限の税負担(法人住民税均等割)が生じます。

④ 不動産管理会社の法人税申告について、一般的に本人が行うことは困難なため、税理士へ申告依頼をすることとなり、その報酬が必要となります。

⑤ 不動産管理会社について、社会保険への加入が必要となることがあります。

4 不動産管理会社の運営形態とその特徴

(1) 不動産管理方式

不動産の所有者はオーナーのままですが、不動産管理会社が個人所有物件の管理業務を行うことで、オーナーから管理料を徴収する方法です。

 

 

 

 

 

① 特徴

  • 賃貸借の名義はオーナーであり、不動産管理会社は不動産の清掃・集金代行などの管理業務を行います。
  • オーナーと不動産管理会社間において不動産管理委託契約が締結され、毎月管理業務の対価として月額管理報酬を支払います。

② 留意点

  • 会社がオーナーから受け取る管理料と業務内容の整合性に留意する必要があります。

 

(2) 一括借上方式

オーナーが所有不動産を不動産管理会社に一括で賃貸し、それを不動産管理会社が第三者に転貸し、賃料の差額を手数料として徴収する方法です。

 

 

 

 

 

① 特徴

  • 不動産そのものを不動産管理会社が一括で借り受けます。
  • 不動産管理会社の実質的な収入は賃貸人からの賃貸収入とオーナーに支払う賃借料の差額になります。
  • 不動産管理会社は空室時の空家賃の支払いなどのリスクが高い分、管理料徴収方式よりも高い手数料を受け取ることができます。
  • 相続財産の評価にあたって、賃貸割合が常に100%になります。

② 留意点

  • 借上げ家賃の設定に留意する必要があります。

 

(3) 不動産所有方式

不動産管理会社がオーナーから物件を取得し、不動産を直接、管理運営する方法です。

 

 

 

 

 

① 特徴

  • 高収益の物件をオーナーから不動産管理会社が買い取り、オーナーの毎年の所得の軽減を図ることで、所得税対策と相続税対策に利用することができます。
  • 不動産管理会社が所有していない不動産については、不動産管理方式および一括借り上げ方式と併用することが可能です。
  • 遺産分割が困難な不動産について、法人が所有することにより、株式や給料という形で実質的な分割をすることができます。

② 留意点

  • 築年数が相当期間経過しており、かつ収益性の高い建物を会社に移転させると最も効果的です。
  • 含み益のある土地については売却することによって譲渡益が発生し、譲渡所得税が課税されるため留意する必要があります。

 

5 不動産管理会社を設立するポイントは

いままで個人のみで不動産を所有していたものを、法人設立するというのには、上記のようにさまざまな視点から検討すべき事柄があります。そこで、不動産管理会社を設立するにあたってポイントを挙げました。

(1)  給与による分散か?贈与による分散か?
・・・将来の納税資金を準備することを検討するうえで、親の資産を親族に移転させる方法には、①不動産管理会社を通じて給与の支給をする方法②金銭を贈与する方法があります。

(2)  個人所得を、どれだけ不動産管理会社に移転するのか
・・・設立メリットが、デメリットを上回る効果・費用対効果ががあるのか等検討する必要があります。

(3)  個人所得の規模はどのくらいか
・・・所得が大きいオーナーほど、収入の分散に伴う節税効果は、より大きくなります。したがって、親族に不動産を贈与する、という選択肢もあります。

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